Story

今から7年ほど前、博士論文の題材としていたセザンヌとプッサンの絵を見るためパリを訪れました。

滞在中はあちこち美術館を回っていたのですがその中、ルーヴル美術館やギメ美術館などで、気になった彫像(ギリシャ・ローマ時代のものから東南アジアの仏像やロダンの作品まで)の写真をたくさん撮影しました。

当時日本の美術館、博物館ではまだ写真撮影は禁じられており、撮影できるのが物珍しく楽しかったこともあります。

帰国後、写真をプリントアウトしてまとめたファイルを作ったものの、しまい込んだままになっていました。

 

2年前の2019年、制作の新たな切り口、展開、モチーフを求めて集中的にドローイングを行なっていたのですが、そのとき放置されていた彫像写真のファイルを改めて開くことになりました。

彫像を描くことは思いのほか継続され、ドローイングから油彩の作品に発展させるようになりました。

最近は仏像を描くことが多いです。

モチーフとしての彫像は生身の人間に比べると、雰囲気や感情よりも、ものの形態・構造が前面に出てくるように感じられます。

個人的な感触ですが、対象に踏み込んだり作り変えたりという事がしやすいと言えます。

私はキャリアの初期から長い間、抽象的に画面を作ることをやってきましたが、描く対象を変えながらも画面を組み立てるという意識の延長で描いているのだと思います。

(2021/4/8)

※こちらから博士論文データが閲覧できます。

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